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標題の『カミングアウト』と言うカタカナ英語、最近よく使われるが、そのカミングアウトと辞書で引いてみると「自分が,社会一般に誤解や偏見を受けている(同性愛者などの)少数派の主義・立場であることを公表すること。単にアウトともいう。」(「デイリー新語辞典」三省堂)と、出てきた。
別に私は同性愛者でも偏見を受けているとも思えないが、最近、一般的に使われている意味での『カミングアウト』をしたいと思う。

小学校5年の1学期、私は札幌市の八軒から札幌の山鼻地区に引越をした。山鼻地区は豊平川と藻岩山に挟まれた形で中央区の端っこの方にあり、私の家はそのまた端っこの方だった。大都市『札幌』の中心である中央区とは思えない緑豊かな場所で、豊平川まで、歩いて3分、藻岩山まで歩いて10分ほどで、夏休みともなれば、もう毎日、川や山で日が暮れるまで遊んだものだ。
当時から魚釣りが好きで、豊平川にはウグイや虹鱒をよく釣りにいったが、当時はまだまだ放流数も少なかったのか、下手くそだったのか、そうそうに釣れるものではなかった。
釣れない釣りほど面白く無いのは、今も昔も同じ。
なんとか、爆釣したく、チャリをこいで、何キロも釣れる場所を探したもんだ。当時はインターネットなどある訳もなく、人づての情報にしても、同学年の子供の話で全くあてにならない。足で稼いでポイントを探すしか手は無かった。

そういう毎日を過ごした5年生の夏休み。とうとう見つけた誰も知らない爆釣ポイント。
そこは豊平川の支流のまた支流で、川幅1〜1,5mほどの急斜面を流れる極小河川だった。釣れる魚はウグイでもマスでもなく『カジカ』 体長5〜20cm程度の奴だが、もう面白くて面白くて。最初はサシやミミズを使ったエサ釣り。川幅が極端に狭いのと周りはブッシュに囲まれている事から、当時使っていた振出のエサ竿は全く使えず、竿先だけを使ってやっていた。
そのうち、エサ釣りに飽きて、次にやったのは、今思えばワームフィッシング。当然、当時はワームなど無く、何を使ったかと言えば、輪ゴム。赤い輪ゴムを2つに切って、それをエサに見立てて、竿先で少しのアクションを加えると岩の影からスーッと来たかと思えばバクッってなもんで、いとも簡単に釣れた。多分、エサ釣りより釣れたのではないかと思う。

近所に住む同学年のH君も誘って毎日その川に通い詰めた。魚はいくらでもいた。
H君の家にも自分の家にも犬と猫をかっており、釣ったカジカを誇らしげに持って帰ってはその犬猫のエサにしていた。それこそ毎日10尾以上はその川から抜いてきた。

夏休みも終る頃から、その川からカジカの姿は見えなくなったが、それでも、「また来年になれば、釣れるはず。」と思っていた。

その翌年の夏休み、また2人でその川に入った。釣れるはずの淵、昨年には何尾も出た落込み。渓相は何も変わっていないのだが、肝心のカジカが全く出ない。本当に1尾も出ない。それでも前年の良い思いから、数日間は通った。しかし全てボウズに終わってしまった。
その翌年も同じ結果に終わり、自分も中学から高校と進学し釣り竿を持つ機会が減り、そんな事など、思い出しもしなくなった。

専門学校を卒業した後、まともに就職もせず、バイクの事しか頭になく、その日暮らしみたいな日々を送っていた夏。あまりにも暇を持て余していた自分は、何故か昔を思いだし、その川へ当時と同じ赤い輪ゴムを2つに切ってチャレンジしてみた。
結果はやはりボウズ。

その時やっと気が付いた。小学5年生のあの夏の数週間で、その川の魚は絶滅していた。たった2人の小学生が数週間通っただけで、その川の魚は絶滅してしまった。
川幅1mの極小河川と言えど、数キロメートルはある川でだ。想像するに、数百年以上も世代交代を繰り返し細々とだが、確実に子孫を残していった魚が、たった2人の小学生に絶滅に追いやられたのだ。(補足説明をさせてもらえば、その川の上流には一切の建造物が無く排水が混ざる事など絶対に無い川での事。)

正直、ショックだった。ガキの頃の楽しかった思い出が自分の手により、元には戻れない姿にしてしまった。

最近、読んだ某釣雑誌の記事で、ある釣り師が言うには、それぞれの川には主(ヌシ)みたいな魚が居て、けして釣られないそうで、その主が必ず子孫を残すので釣りによる、絶滅の心配は無いとの事。

けして釣られない主っているか?夢だよそんなの。漫画じゃあるまいし。よくもまぁ、しゃぁしゃぁとそんな事が言えたもんだ。一つの川の魚を絶滅に追いやったのは、小学生2人だよ。それも僅か数週間で。
川なんて本当に脆いもので、あっという間にその様子が変わってしまう事なんて何年も釣りをやっていれば経験済みでしょ。

特別C&Rを薦めている訳じゃない。自分もたまには釣った魚を食べているさ。
でも、根こそぎキープってのは、本当にやばいよ。
『釣れなくなれば、また別の川を探すさ。そのうちまた釣れるようになるよ。』では、自分で自分の首を締めているようなもの。

以上の過去の苦い経験から、今でもたまに見る、根こそぎキープ派の釣り師の魚篭を満載にした誇らしげな笑顔を見ると、どうしても顔が引きつってしまう。
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